荒井静香の最も長い一日(その日の反省文より抜粋・笑)
それは二日目の夜。 楽日のらくらくに起こりました。 事の始めからご説明しましょう(言い訳させて下さいとも言う) |
最初の江田の登場シーン。 千葉が江田の怒りにビビって食べかけのパンを口の中に突っ込んでしまう所。 デム君の汗と血と唾液とパンくずにまみれた肉体特訓の成果を問われる名シーンならぬ命シーン。 ここでは江田が「チョッと!」と怒鳴るタイミングでデム君のその後の苦しみが決まるみたいです。 一度も前から見た事の無い私はどんな状態になっているのか定かではないのですが… そのほんの一瞬のタイミングがズレてしまったかな? デムちゃんごめん!と、私の心の中をよぎりました。 本当のところは分かりません。 |
実はそれまで本番に入ってから忘れていた足の痛みが甦ってきて、 格好良くキビキビ歩かなくてはいけない江田がビっコをひいて歩けないので、 それがタイミングをズラしたか?という反省と共に、足を悟られまいと踏み出した歩数が足りなかったのか、 それまでの立ち位置とは全然違う場所に… ソデに引っ込んでからもしちゃいけない反省をしてしまったのです。 |
そう、そんな出だしの掛け違いから全てが始まったのかも知れません。 次の江田の登場シーン。 昨日発音を誉めて頂いた中国語もクリア。 (そうそう、ホントに知ってる人が来たらマズイもんね。という訳で 学生時代のテキスト引っ張り出してセリフを考えた2度目の登場シーン) なんとか上手く?言えたかな?とちょっとホっとして、 千葉がアロンアルファでくっついてしまった手を取ろうともがいてる方に目をやると、 今までに稽古でも見た事ないくらい面白いデム君の後ろ姿。 客席でもなんかやたらウケてる? |
あっ!右手と左足上げたっ! あっ!次は左手と右足だっ! 次は何やってくれるんだ? ここで声をかけて中断させたらお客様もさぞ残念だろう。 いや〜デムって面白いじゃ〜ん! と笑いをこらえて無表情を取り繕い、心の中は非常に感心しながら いつもより長く後ろからデム君を見ていたのがいけなかった。 「ちょっと!まだなの!コピー?」 と千葉を制した後のセリフが・・・・・ アレ?なんだっけ・・・??? まっしろ〜〜〜 |
いかん!次何だ?何だっけ? いつもの稽古のクセで客席に居るわけがない、 つっちゃん(稽古ではプロンプをしてくれていた)の方に向かって 右手をカムカム(セリフちょうだいっ!のゼスチャー)してしまいそう… いやもしかすると微妙に右手が動いていたかも知れません。 白状すると視線も一瞬素に戻っていたと想います。 役者として一番ヤバイ状態です。 |
千葉と江田、無言で見つめあう沈黙の長いなが〜い時間が流れ・・・。 その後は何を言って退場したのかもう覚えていません。 どこから本当のセリフが復活したのでしょう。 イヤ、いい加減なセリフを並べ立てて退場したのだと想います。 今までもセリフを忘れた時はありました。 でもそれは自分が忘れたとは気がつかないままだったり (共演者の方が忘れたと判断して、しょうがないわね〜くらい想ってる…) 忘れたから何かそこへつなげるセリフを足そうという、ある程度の冷静さ?が残っているものでした。 ですが、今回はホントに まっしろ〜〜 それは本当に恐ろしいものです。 その後の江田はもうボロボロです。 |
今回江田が千葉に向かって言うセリフの中で、 「そんなっ!可愛さアピールするような格好してもムダよっ!」 というのがありまして… 何故かこのセリフについてのお客様の反応が色々と返ってきています。 多くは 江田さんはあの千葉の格好が可愛く見えたんですか? あれが江田さんには可愛さアピールする格好なんですか? と・・・。 私に聞かないでくれ〜〜〜! デムくんは稽古の度に色々頭の中では考えて来てくれていたようですが、 私は稽古の時から一度も可愛いと想った事はありません。 ま、あくまでセリフですから… でも本番中一度だけ千葉の動きが可愛いというか、面白いと想った事がありました。 それがあの魔の沈黙の時間の時です。 皮肉です。 デム君はもしかすると最高の演技をしてくれたのかもしれません。 そしてその最高の演技に不覚にも飲まれてしまってボロボロになってしまったダメダメな私です。 本当、許してください。 |
さてそれらの恥ずかしい証拠のテープは今、私の手元にあります。 このまま証拠隠滅してしまおうかとマジで考えています。 もう誰にも見せないもんねっ! |
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